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2005年08月16日 (火) | Edit |
きなさんのブログでお見かけしたので、再読しました。

「朗読者」 ベルンハルト・シュリンク 松永美穂 訳 新潮社Crestbooks 1800円

 主人公ミヒャエルはそのとき15歳だった。学校帰り、病気で気分が
悪くなったところを介抱してくれたのは、21歳年上の女性ハンナであった。
やがて二人は歳の差を越え、互いに求め会うようになる。ハンナの
ミヒャエルへの願いは、詩や戯曲を朗読することであった。
しかし、ミヒャエルはハンナの過去をついに耳にすることはなかった。
そう、彼女が突然失踪し、ミヒャエルが法学の学生として法廷で彼女
と出会うまで・・・。

 ミヒャエルは法廷でハンナの忌まわしい過去を知る。ハンナは、
他の被告人たちの罪も全て自分がかぶることになる。
それは、仲むつまじかった過去の記憶とともにミヒャエルに、
とあることを想起させた。彼女には、そうしなければならなかった
理由があり、そしてそれが彼女のプライドであったことを。

 ミヒャエルはそのことに苛立ちを感じ、そしてハンナを忌まわしく
思った。だがミヒャエルはハンナがかつていた場所を放浪し、やがて
刑務所にいるハンナの場所をつきとめる決心がつく。
そして、ミヒャエルはかつてそうだったように、ハンナにテープ
レコーダーと自分が朗読した詩や戯曲のテープを送り続ける。
彼がハンナに会うことはなかったが、朗読は続けたのである。
そしてつかの間の再会、そして恩赦が下った日・・・。

 この話は、主人公が過去を想起する形で描かれている。その理由は、
物語の最後に書かれているとおりである。その部分の描写は、今でも
思い出すことができる。自由になるために物語を書く。自由に決して
手が届かないとしても。

 これから読まれる方のために、紹介はこの程度にしておいた。
時の流れが大きく転換してゆくと、作者であるシュリンクの弁護士と
しての経歴が生き生きとした文体を生み出してくる。主人公が法学を
専攻し、話がやや法曹界の話に偏ってくるのは作者なりの手法として
仕方がないとしても、前半のごくありふれた恋愛描写に比べると、
後半は硬い印象が強く、バランス的にはあまりよろしくない感じも受ける。
ただ、後半の描写はナチス政権下での当時の人々の考えや行動を思い
起こすには十分であり、読者に関心を与えることは間違いない。

 とっつきにくい話題かもしれないが、それをこの物語を通じて自然と
受け入れる、いや受け入れざるを得なくなる、そんなドイツ近代史と
の接点を与えてくれる作品でもあるといえよう。弁護士になる前の学生、
あるいは修学生の眼から見る法曹界というのもまた興味の持てるところ
である。しかし、物語の大筋は、主人公の心に深く刻み込まれた、
深くそして残酷な愛であり、我々が数々の出会いを経験しながら、
自らの人生を全うしてゆくなかで、共感できる部分が多々あるのでは
ないだろうか。この物語ほどではないにしても。

 とかく、取り上げられている話題が読者に強い印象を与えてしまうため、
そちらのほうに心が向きがちになるが、本当に読みとっていくべきなのは、
そのときそのときミヒャエルの感じたこと、そしてそれにたいする行動
ではないだろうか。一見すると、後半では特にミヒャエルもまた冷酷な
人間ではないだろうかとの印象を受けるが、読み終えたとき、それは
裏切られる。そして、ミヒャエルもまた我々読者と同じひとりの人間として、
このできごとを経験したという安堵感をおぼえるのである。
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コメント
この記事へのコメント
朗読という形で刑に服すハンナとコミュニケーションを再開するところは不思議な切なさに満ちてました。
2005/08/18(Thu) 14:23 | URL  | dAikA #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
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2005/08/19(Fri) 22:06 |   |  #[ 編集]
dAikAさん:
長々とした記事ですが、読んで下さってありがとうございました!
ネタバレしないように書いてみたのですが、読んでない方には??
な部分もありますね>反省 本は色々読んでいますので
(ミステリも好き)また感想を書いてみようと思います。
また遊びにきてくださいね。お待ちしています!
2005/08/20(Sat) 23:47 | URL  | ひーさん #-[ 編集]
私も再読してみようと思います。
また遊びに来ます。
2005/08/26(Fri) 18:24 | URL  | dAikA #M8cMvgvk[ 編集]
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2005/08/26(Fri) 03:35:22 |  三四郎日記

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