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2006年05月26日 (金) | Edit |
神々の山嶺(かみがみのいただき) 夢枕 獏 集英社文庫 読了

 これまで夢枕 獏さんといえば、陰陽師シリーズしか読んだことがありませんでした。きっかけはこの番組でヒマラヤが出てきたから。富士吉田のここへ行ったせいもあるかもしれません。山岳小説といえば、新田次郎くらいしか読んだことがなかったので、久々の本格的山岳小説に心躍らされました。
 舞台はいきなり1924年から始まります。1924年、それはイギリスの第三次遠征隊がエベレストに挑戦した年。ジョージ・マロリーとアンドリュー・サンディ・アーヴィンがエベレストの山頂へ向かう姿をノエル・オデルがカメラで最後に捉えたシーン。二人の姿はやがて雲の中に消えてゆきます。それっきり二人は戻って来なかったのでした。

 そして1995年。カメラマンである深町が何故か一人でエベレストでビヴァーク(露営。やむを得ず簡易装備を用いて宿泊を行うこと)しています。何故?と思わせておきながら序章が幕を閉じます。ここまでのカメラワークがとても気持ちいいの一言です。

 主人公は深町というカメラマン。山を志しながらも自らの技術に限界を感じ、それでもどこかで山と関わり合っていたという気持ちがあるからでしょう、山に関係した写真撮影を手がけていました。このあたりが等身大というか、ふだん仕事を持っていてなかなか山へはゆけないけれど、山を目指す気持ちは衰えていない、そんな読者をぐっと惹きつけるのです。深町はエベレスト遠征で二人の仲間がファインダー越しに滑落してゆくのを目の当たりにしました。もうエベレストに行くことはないだろう、そう思って日本に戻ろうとしたとき、彼は出会ったのです。登山道具屋の店先にマロリーのカメラとおぼしきものが置いてあるのを。そして彼は出会ったのです。この先、彼が運命を共にすることになる孤高の天才クライマー・羽生丈二に。

 こうしてマロリーのカメラ、羽生丈二というふたつのキィワードをめぐって深町の冒険がはじまります。いろいろな出会い、事件、別れを経験して最後は深町は一人でエベレストへ向かいます。最後は涙が出ました。地球で最も高い場所をこんなにみずみずしく描いた作品は読んだことがありません。夢枕さんの歯切れの良い文章のなせる技だと思います。目の前に聳え立つ氷壁、足下に広がるヒマラヤの峰々、これらが雲の上を歩く爽快感と恐怖感と相まって目の前にウワァーっと描かれてくるのです。夢枕さんは実際にベースキャンプまで歩き、また日本の冬山も歩くことで細部にわたる丁寧な描写を実現されています。これは新田次郎同様、経験者のなせる技でしょう。

 単行本が発行され、文庫版となる前の1999年、マロリーの遺体がヒマラヤで発見されました(※クリック注意)。夢枕さんはこれを受けて文庫版に手直しをされたようです。しかし、マロリーのカメラはその場では発見されることはなく、マロリーが人類初のエベレスト登頂を果たしたのかは未だ謎のままなのです。
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