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2005年11月12日 (土) | Edit |
藤沢周平 『蝉しぐれ』読了しました。

 読むきっかけは、きなさんのブログ。
自然描写が美しい、とご感想にあったので躊躇うことなく
手にしました。むろん、タイトルの『蝉しぐれ』じたいにも
心惹かれました。

 場所は、東北の海坂(うなさか)というところ。おそらく
架空の藩であると思われる。主人公牧文四郎は武士の子である。
隣家の娘ふくに淡い恋心をもちながら、学問に剣術に忙しい
日々を送っていた。そんなある日、父助左衛門が捕らえられて
しまう。

 結局父親が切腹に処されることになり、かなりのショック
を受けました。一縷の望みも捨てられないといった場面展開ながらも、
処分は意外にもあっさりと決まり、そのあとの処理を段取りよく
すすめてゆくあたりに当時の刑罰システムの潔さといったものを感じ、
しばらくそこで読むのがためらわれたくらいです。自分がもし
この時代に生まれていたとしたら、はたして文四郎のように
父との短い面会において、あのように気持ちを抑え続けることが
できただろうか、と感じずにはいられませんでした。

 さらに罪人の子、と周囲に罵られながらも普段と変わりなく接する
友人、逸平の姿はまさしく本当の友とはこうあるべきだ、というものを
見せてくれた気がしてなりません。またもう一人の友人、与之助も
自らの悩みをさらけ出し、納得したうえで学問の道を究めるべく
江戸へと旅立ちます。逸平は早くも家長として城に勤め、文四郎も
ようやく城勤めの道を手にし、与之助は江戸で立派に学業をおさめ
講師となります。こうして別々の道をすすみながらも、3人が顔を
合わせれば馴染みの店で酒を酌み交わし、お互いを励まし合う様は
清々しいものがありました。

 その後、剣術を極めた文四郎は父の巻き込まれた陰謀の渦中に身を
投じざるを得なくなるのですが、このあたりの展開が実に快いテンポです。
一気に読み進めることができました。最終章の件、特にふくの科白に
なんとも心のつまされる思いでした。もちろん、これがあるから読後の
スッキリ感があるのですが…。

 よくある時代小説ではなく、これは文四郎の青春そのものを描いた
物語であり、広々とした田畑とどこまでも続く青い空、そして夏の景色
がていねいに織り込まれたスケッチでもあります。読み終わったあとの、
なんともいえぬ安堵感そしてやるせなさ。初出が昭和61年、そして
著者はすでにお亡くなりになっていることを知ったことが2度目の
ショックでした。もっと早くこの作品に出会いたかった。少なくとも
もっと有意義に青春時代を過ごすことができたのではないか、
そう思わせる作品でした。
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2005/11/13(Sun) 01:46 |   |  #[ 編集]
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